いろいろ詩のこと

全ての人に感謝をささげなくっていい、と学んだ。 ハロー言葉 vol2.レポート

成宮アイコさん

本日は、成宮アイコさん @aico_narumiya 青山祐己さん @bokeyamountain  内藤重人さん @naitoshigeto 共催のイベント「ハロー言葉 Vol2.」に行ってきました。

「ハロー言葉」はオープンマイクと、ゲスト・主催のパフォーマンスのイベントです。
オープンマイクは、毎回主催者がお題を決めており、お題に関する自作の詩を読みます。
オープンマイクの今回のテーマは「思い出したのは」
「思い出したのは、」から始まるテキストならば、詩・手紙・独白・日記形式など、なんでもOKというもの。

結論から言うと、オープンマイク、そしてゲスト・主催のパフォーマンス、全てよく、このイベントは絶対にオススメしなければいけないと思いました。

本音だけが飛び交うライブは楽しい

このイベントをオススメしたい、と感じたのは、ステージの上で本音の言葉が交わされているからです。
この日のトップを務めたのオープンマイクの中野さん。
彼が母親への愛・そしてご自身と向き合わなかったことへの回想と断絶について語ったのを皮切りに、初めて借りパクしたときの思い出や成人式に行かなかったこと。
家族との相克。
イベントでの言い間違いの記憶など、一つ一つの思い出が口に出されては

その中で感じたのは、よくできた話と、心に響く言葉が必ずしも一致しないこと。
他のイベントで出会った時に本当に素晴らしいパフォーマーが、色褪せてしまうくらい、今日のオープンマイクの出演者は素晴らしかったことです。

心に響く言葉を持っていたのは、きっと、その日のステージでのステージと結びついていたからだと改めて思いました。

記憶に残るのは、成人式に行かなかった経験をお話しされた、あと三日で40歳になる方。
お金を稼ぐための生活に追われた当時の彼女は、自分は成人式に行かなくても成人として生きているのだと自分に言い聞かせ、成人式に行かなかったと言います。
それでも少し生きたかった成人式。
でも、そのあと成人として生きていくことを通じ、自分自身に疑問を持ちながら、成人式で行われる一つ一つの行為、例えば写真撮影がアイドルとの記念撮影となったりしながら、ついに再びの成人を迎えると言うお話でした。

お話を聴きながら、私は素直に感動していたのですが、特に感動していたのは、彼女が生きていると言うことそのものでした。諦めるのではなく、たんたんと生活し、その中で一つ一つが新たなイメージとして昇華していくことでした。

私はオープンマイクを聴きながら、社会学者の打越正行さんの「沖縄の暴走族の文化継承過程と<地元> : パシリとしての参与観察から」という論文を思い出しました。

沖縄の暴走族を研究するために自ら暴走族の舎弟となって観察した経験をもとに書かれた打越さんの論文では、メグミルクをおいしく飲むことなどを通じて暴走族のなかの立場を獲得することなど書かれているのですが、私はこれを読んだ時、ここからこぼれ落ちたらどうなるのだろうかと言うことばかり考えていました。
でも、こぼれ落ちる、ことにフォーカスするのではなく、生きることに目を向けなければと今日のオープンマイクを聞いて、改めて思いました。

情けないことを口にするのは愛すべきことだ

そして、オープンマイクとともに取り上げなければならないのは、ゲストと主催の3人のステージです。

内藤重人さんは、鍵盤と歌のソロ。
リズミカルな歌でも手を叩かないような言葉の重さが印象的でした。

なかでも心に残ったのはMC。
出会った全ての人に感謝をささげられるわけではない、という言葉はずしりときました。
私たちは綺麗事だけで生きているわけではないのだと思ったのはもちろんですが、
内藤さんが出会った人に対して最低限、誠実に向き合っていると感じたからです。

きっと、全ての人に感謝と行っている人のうち、少なくない数の人は、「全て」から嫌いな人を削除しているのだと思います。
ステージの上で「全ての人に感謝をささげられるわけではない」と言える人は、少なくとも、嫌いな人も人として認識しているのだと思いました。

トリとなった、成宮アイコさんと青山祐己さんの詩と鍵盤の二人によるステージも本当によく、なかでも、新作となった「伝説になんかならなくていい / オアシス」という作品は、自分自身が一つ一つの時間を生きていることを感じる、ベルクソンすら思わされる作品でした。すごかった。

この日のゲストはツクシテツヤさん。
おじさんと年下の女性の性愛をおじさんからそして女性からの目線で歌う歌や、もう会えなくなった人にお金を返したいという歌に酔いしれました。

一つ一つのパフォーマンスが、その裏にあるけしてかっこいいとはいえない経験に裏打ちされ、すごく骨のある表現が揃った1日でした。

書き手としても司会としてもそういうイベントを作れると、また次もやりたくなる!と思える1日でした。ありがとうございました。

ABOUT ME
tewatashibooks
てわたしブックスの管理人です。