詩誌『て、わ たし』

て、わた し第7号 誤植のお詫び

『て、わた し』第7号に特集した、韓国系のアメリカ合衆国の詩人、フラニー・チョイさんの作品「用語集」(原題:Glossary of terms)に誤植がありました。謹んでお詫び申し上げます。

修正箇所:2列1行目 「雲」 を 「霊」へ修正

元の詩が表形式で作られているため、PDFファイルも再作成しました。こちらをご利用ください。
PDFファイル

詩「用語集」について

「用語集」はフラニー・チョイさんが2019年に発表した詩集『Soft Science』の冒頭に置かれた作品です。4行×4列の16マスで構成されており、「星」「霊」「口」「海」という言葉に対してつけられた定義を各行で書いています。

用語集、は著書で使われている主要な言葉の解説です。
論文にはよくありますが、詩集におかれることはまれ…というかまずありません。
全ての言葉は暗喩であり、想像での補完するよう求めるからです。
「用語集」が詩として書かれたことそれ自体がこの詩集のヒントになっています。

この詩は「星」「霊」「口」「海」の持つ意味が詰まっています。
そしてその意味は表の形で限定されています。表のマスはが生み出す限定は、そこから広がる連想を通じて言葉に新たな意味をつながっていきます。

海のなかに故郷を感じる人はいるかもしれないけれど「冷たい」と「祖先」をむすびつけようとしたり、その反義語に「機械」をすぐに当てはめられる人はいません。

言葉と見出しがひとつずつ対応していることも表の特徴です。あたかも、イエス=神の子のように、一つの名前は別の事柄と向きあいます。結びつけられた言葉への共感や違和感は新たな姿を言葉に生み出すのです。

そして、これらの言葉はフラニー・チョイさんのほかの詩とも結びつけられます
例えば「口」。この言葉には「参照せよ」として「のろま」が意味づけられています。
フラニー・チョイさんの詩「チェ・ジョンミン」の冒頭で「口」を表す非常に印象的な連が出てきます。

小学校一年生のとき私は母の許可をもらって
学校ではフランセスで通すことにした。七歳のとき、

ダメダメな舌たちが私の名をずたずたに発音するのに
うんざりしていていたから。もうしようがない

このしょぼくてみじめな韓国名を砂に埋めて
見ないですむようにしていた。

「チェ・ジョンミン」より(訳:ヤリタミサコ 「て、わた し」7号より)

日本人の中にも海外の人が自分の名前を発音するときに「ずたずたに発音」された経験を持つ方はいらっしゃると思います。フラニー・チョイさんは社会生活をする一歩でこの経験を持ち、そして移民として「ずたずたに発音」される社会に適応することを強いられました。

自身の名前が「ずたずた」にされる経験と、自身や家族の発音が通じないことで心が「ずたずた」にされる経験が「のろま」に詰められているように思います。

詩の研究において言葉と言葉の対応は大切な役割を果たしています。フラニー・チョイさんは自分自身で言葉の対応を表すことで、詩の知識をひらいています。そして、さらなる豊かさへと向かおうとしています。

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