パレスチナでの集団殺戮が続いています。
2024年10月にヨルダン川西岸地区および東エルサレムで文学祭を開催するPalestine Festival of Literatureが、作家、翻訳家、イラストレーター、出版社を含む書籍に関わる仕事をする人にむけて、イスラエルの文学諸機関による加担を拒絶するようもとめる公開書簡を1000人以上の作家の署名とともにプレスリリースしました。
現在も署名を集めていますが、日本人の書き手はほとんど応えられていません。
ご署名にご協力いただきたく、公開書簡の文面を試訳し掲載します。
日本語訳文はパブリックドメインでどなたもご利用いただければと思いますが、文責は私にあり、誤訳のご指摘をいただけますと幸いです
背景
第二次世界大戦直後にシオニストのテロリストがイスラエル「建国」のためにパレスチナの町や村からそこに住むパレスチナ人を追い出してから76年間、シオニストによるパレスチナ人の財産の収奪、国連の決議を無視した入植や虐殺が続いています。
2023年10月から続く攻撃ではガザ地区だけで45,000人以上が亡くなっています。ヨルダン川西岸地区と東エルサレムを含めるとさらに多くの犠牲者が出ています。ガザ地区の死者の三分の一が子供であり、一命をとりとめても手足を切断された人が何千人もいます。
パレスチナ人の作家、ジャーナリストも例外なく犠牲になっています。正確に書くと、イスラエルは作家やジャーナリストをイスラエルは積極的に殺しています。パレスチナでイスラエルが行っている虐殺や民族浄化を世界に伝えるからです。
殺害された作家のうち、教育者でもあったリフアト・アルアライールさんはNHKスペシャルでも取り扱われました。同じ番組に出演したムスアブ・アブートーハさんも2023年11月にイスラエル軍に捕らえられ、その後、アメリカ世論の高まりもあったせいか解放されています。
この現況に対し、ヨルダン川西岸地区および東エルサレムで文学祭を開催するPalestine Festival of Literatureが、作家、翻訳家、イラストレーター、出版社を含む書籍に関わる仕事をする人にむけて、イスラエルの文学諸機関による加担を拒絶する公開書簡を1000人以上の作家の署名とともにプレスリリースしました。
現在でも署名を集めています。12月中旬時点で署名者は7000人を超えています。
公開書簡に署名している作家
署名している作家はノーベル賞、ピューリッツァー賞、ブッカー賞を受賞している作家が含まれます。訳者の独断と偏見で日本語訳がある人(敬称略)を中心に取り上げると以下となります。
- グレタ・トゥーンベリ(作家・環境活動家)
- ジュンパ・ラヒリ(作家 邦訳「停電の夜に」(新潮文庫)など)
- オーシャン・ヴォン(作家 邦訳「地上で僕らはつかの間きらめく」 (新潮クレスト・ブックス))
- ブライアン・イーノ(音楽家)
- ソウル・ウィリアムズ(詩人、映画「Slam」主演、スポークン・ワードアーティストの草わけ)
- サフィア・エルヒロ(詩人、フォーブス・アフリカ誌2018年度30歳未満の30人)
- レーナー・ハラフ・トゥッファーハ(詩人、邦訳 現代詩手帖2024年5月号パレスチナ詩アンソロジー)
- ジョージ・エイブラハム(詩人、邦訳 現代詩手帖2024年5月号パレスチナ詩アンソロジー)
- ナタリー・ディアス(詩人、2021年ピューリッツァー賞(詩))
既訳について
この公開書簡は私よりはるかにガザ地区の記事の翻訳に長く関わっている、コンマにはスペースさんが2024年10月30日に翻訳されています。
しかしながら、現況の日本でのこの署名の協力者がほぼいない状況を鑑み、かつ「て、わた し」に関わる作家が参加されているため、拙訳で恐縮ですが、こちらに訳文を掲載します。
また、コンマにはスペースさんは、ガザ地区の市民の声を伝えつづけていらっしゃるので、フリーペーパーのpdfをご覧ください。
お願いと留意事項
公開書簡を読んでいただき、歌人、俳人、MC、小説家、脚本家、文芸評論家、翻訳家、絵本作家、イラストレーター、装丁家、校正者、詩人、出版社、文学祭関係者など書籍、文学シーンを作っている方にご署名ご協力お願いします。
署名URL
https://www.palfest.org/refusing-complicity
不特定多数に署名を求めているため、パレスチナ以外について必ずしもご自身の主義主張と合わない方がご署名されていることがあります。その点だけご了承ください。
Refusing Complicity in Israel’s Literary Institutions (イスラエルの文学諸機関による加担を拒絶する)
試訳 山口勲
【署名の賛同者が多いため、リストへの追加に時間がかかっています。フォームへの投稿は1回だけにしてください】
2024年10月28日(月)
私たち、作家、出版社、文学祭関係者、その他の書籍に関わる仕事をする人間は、21世紀で最も深刻な道徳的、政治的、文学的な危機に対し、この書簡を公表します。パレスチナ人が圧倒的な不正義に直面していることを否定することは不可能です。現在パレスチナで行われている戦争は私たちの家庭に入り込み、心に突き刺さります。
いま起きているのは非常事態です:イスラエルはガザ地区を住めない場所に変えています。2023年10月以来、イスラエルに殺された正確なパレスチナ人の数すら分かりません。なぜなら、イスラエルは死者を数え、埋葬する能力を含めた全てのインフラを破壊しているからです。それでも、少なくとも43,362人のパレスチナ人が2023年12月以降殺されており、子供たちへの今世紀最大の攻撃であることを私たちは知っています。
これは大量殺戮です。一流の専門家と機関が何ヶ月もそう言い続けています。イスラエル政府はガザ地区の人々を抹殺し、パレスチナ人国家をなりたたなくし、パレスチナ人の土地を奪いとることへの意欲を率直に示しています。この大量殺戮は75年間に及ぶ強制追放、民族浄化、アパルトヘイトの結果です。
文化はこうした不正義を正常化させるために不可欠な役割を果たしています。イスラエルの文化機関は、国家に直接協力し、数十年にわたる何百万人ものパレスチナ人に対する収奪と弾圧を曖昧にし、偽装し、または芸術の力で正当化してきました。
私たちには果たすべき役割があります。私たちはイスラエルの諸機関に対し、アパルトヘイトと強制追放との関係を問いただすことなく、良心にもとづいた関係を結ぶわけにはいきません。これはアパルトヘイトと戦うために、数え切れない作家が南アフリカに対して取った立場でもあります。
したがって、私たちはパレスチナ人への圧倒的な抑圧に加担し、または黙って見ているだけのイスラエルの文化諸機関と仕事をしません。私たちは以下の出版社、芸術祭、文芸協会、出版物を含むイスラエルの諸機関すなわち
a. 差別的な政策や習慣による、ないし隠蔽や、イスラエルによる占領、アパルトヘイト、大量殺戮を正当化を含むパレスチナ人の権利の侵害への加担者、または
b. 国際法に定められた、パレスチナ人から奪うことのできない諸権利を一度も公に認めたことがない機関。
上記に挙げた諸機関と仕事をすることはパレスチナ人を害することであり、私たちは仲間である作家、翻訳者、イラストレーター、本の作り手にこの誓約に加わるよう呼びかけます。私たちは出版社、編集者、エージェントに対し、私たち自身の関与と私たち自身の道義的責任を認識し、イスラエル国およびそれに加担するイスラエルの諸機関との関係を断つことを私たちとともに表明するよう呼びかけます。
以下署名者の一覧(略)
署名URL